映画『悠優の君へ』|強迫性障害のリアルを描いた物語

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リアルが胸に刺さる。強迫性障害の当事者として観た『悠優の君へ』

強迫性障害をテーマにした映画『悠優の君へ』をご覧になりましたか?

【あらすじ】

人との間に壁を感じ、学校や家で一人で過ごしている高校生の悠(水崎涼花)。4月になり、女子バスケ部のマネージャーをしている優乃(小谷慈)と同じクラスになる。いつも明るく友だちと楽しく過ごしている優乃は、時々「定休日」と称して学校を休んでいた。
ある朝、悠が遅刻して登校しようとすると、近くのベンチにうずくまっている制服姿の優乃を見かける。別の日の朝も、公園で時間を持て余している優乃に出会う。「学校に行きたくない」という優乃を、悠は近くの海辺へと誘う。
悠は、入学した頃から優乃のことが気になっていた。いつも同じ時間に人けのない手洗い場で手を洗い続けている優乃の姿を偶然見ていたのだ。優乃は、抱えている悩みを誰にも悟られないよう必死に隠して生きていたが、悠に知られていたことを知り、打ち明けることを決める。

引用元:映画「悠優の君へ」公式サイトより

2024年10月に公開された映画『悠優の君へ』は、監督・福原野乃花さんの実体験をもとに、主人公・悠が、強迫性障害を抱えるクラスメイト・優乃との出会いを通して、自分自身や他者との向き合い方を見つめ直していく姿を描いた作品です。目には見えない“生きづらさ”を抱えたふたりの静かな交流が、繊細な視点で丁寧に描かれています。

【強迫性障害とは】

強迫性障害には、同じ考えがぐるぐるとめぐって頭から離れない「強迫観念」と、その強迫観念から生じた不安にかきたてられて行う「強迫行為」といった2つの症状があります。それらの症状が、「不合理」「やりすぎ」「無意味」と分かっていてもやめられず、本人や周囲の人たちの日常生活に影響が出ることがあります。
また、10代から20代で発症しやすいとされ、男性は10代前半、女性は20代以降の発症が多いと言われています。

引用元:厚生労働省 より

この映画のことを最初に知ったとき、「これは絶対に観たい」と直感的に思いました。

というのも、わたし自身も強迫性障害を抱えていて、症状についてはよく知っているつもりでしたが、他の誰かの「同じ病気」の物語に触れる機会は、意外と少ないのです。


だからこそ、この映画を観る前から、とても関心を寄せていました。


どんなふうに描かれているんだろう?


過去のひどい時期の自分と重なって、心がざわつくんじゃないか――そんな不安も正直ありました。

楽しみと不安が入り混じる気持ちで観始めましたが、すぐにその世界に引き込まれ、強く共感しました。

この映画のいちばんの魅力は、「強迫性障害ってこういう病気です」と説明してくるわけじゃないところ。

福原野乃花監督が、自身の実体験をもとに描いた世界だからこそ、
「誰にも言えない不安を抱えながら、なんとか“普通”を装って生きてきた」
——そんな人の姿が、スクリーンの中にそのまま映し出されているように感じました。。

たとえば、優乃が手洗い場でひたすら手を洗い続けるあのシーン。
あれはただの「手洗い」なんかじゃなくて、
不安をなんとか抑えこもうとする“必死さ”であり、
まわりにバレないように「普通」に見せようとする“苦しさ”そのものなんですよね。

繰り返される動作。
無言のまま過ぎていく時間。
その静けさのなかに、張りつめた空気がふっと入りこんでくる——
そんな“目に見えない痛み”が、画面を通してじんわり伝わってきました。

そして、そんな優乃のそばに、そっと寄り添う悠の存在があったからこそ、
「わかってくれる人がいる」ことの心強さを、改めて感じたんです。
そのことがどれだけ心強くて、どれだけ安心できるものか…
観ていて、じんわりと胸に広がっていきました。

当事者として、あの“ちょうどいい距離感”のやさしさに、
ほんの少しだけ、救われた気がします。

静かだけど、たしかにそこにある“やさしさの温度”。
それを、すくい取るように描いてくれたから——
私はこの映画に、心を動かされたんだと思います。

映画『悠優の君へ』を観て、自分と向き合う時間になった

まだ観ていない方は、ぜひ一度、落ち着いた気持ちで触れてみてください。

強迫性障害のことを知っている人にも、あまり知らない人にも、何かしら心に残るものがきっとあると思います。
わたし自身も、「こんなふうに苦しんでいたな」「あのとき支えてくれた言葉があったな」――そんなふうに、自分の過去や、大切な人との関わりを思い返すきっかけになりました。

強迫性障害を描いた映画でありながら、それだけにとどまらない。
誰かを思い、自分と向き合う静かな時間をくれる、そんな作品です。

6月21日追記しました

2025年6月14日〜20日にかけて元町映画館で再上映された映画『悠優の君へ』は、現在上映期間を終えていますが、AmazonではDVDが発売中のほか、U-NEXT や Prime Video にてレンタル配信も行われています。

映画館で観るタイミングを逃してしまった方も、今ならご自宅でゆっくりと鑑賞することができますよ。

▶映画『悠優の君へ』公式サイトはこちら

映画『悠優の君へ』公式サイト

ぜひ、公式サイトでチェックしてみてください!

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この記事を書いた人

✔関西の国立大学医学部で長年、臨床研究業務に携わる
✔強迫性障害と向き合う当事者として、実体験から得た知識や対処法を発信
✔一度しかない貴重な人生の時間を、強迫性障害に縛られ奪われてほしくない――そんな思いでこのブログを運営。

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