「子供の強迫性障害」早期発見と親ができること

子どもの強迫性障害 強迫性障害の基礎

強迫性障害(OCD)は、大人だけでなく子どもにも見られる精神疾患です。特に子どもの場合、「何度も手を洗う」「確認を繰り返す」といった行動が、単なる癖ではなく、強迫性障害のサインであることもあります。

しかし、子ども自身がその行動をうまく説明できなかったり、親がそれを「性格の問題」と捉えてしまったりすることも多く、発見が遅れるケースも少なくありません。

そこで本記事では、子どもの強迫性障害を早期に発見するためのポイントや、親が取るべき適切な対応について、わかりやすくお伝えします。

1.子どもと大人の強迫性障害(OCD)の症状の違い

子どもと大人の強迫性障害の症状の違い

子どもと大人のOCDの症状には共通点もありますが、発症の背景行動パターンに違いが見られることがあります。

子どもと大人の強迫性障害の症状の違い

2.早期発見のポイント

子どもの強迫性障害に早く気づくためには、日頃のちょっとした行動の変化に目を向けることが大切です。
強迫性障害は、最初はただの癖や習慣のように見えることも多く、見逃されやすいものです。でも、早い段階で気づけば、より適切な対応につなげることができます。
そこでこの記事では、親や保護者が注意しておきたいポイントをまとめました。

  1. 繰り返し行動が目立つ :同じ行動(例:手洗いや戸締まりの確認など)を何度も繰り返し、自分でもやめられない様子が見られる場合は注意が必要です。最初は「ちょっとした癖」と見えることもありますが、強迫性障害が関係している可能性があります。
  2. 特定の考えにとらわれている :ある考えやイメージに強くこだわり、それに対処するために行動を繰り返すことがあります。日常生活に支障をきたしているようであれば、早めの診断が望まれます。
  3. 不安や恐怖が強く現れる:何度も手を洗ったり、確認をしないと落ち着かない、強い不安や恐怖を感じる。そういった場合も、強迫性障害のサインである可能性があります。
  4. 学校生活や友達との関係に影響が出る :強迫的な行動や考えが原因で、学校に行けなかったり、友達と遊ぶことを避けるようになっている場合は、専門的なサポートが必要になることもあります。
  5. 身体的症状の出現 :進行すると、強いストレスや不安が頭痛、胃の不快感、疲れやすさなど、身体の症状として現れることがあります。こうした症状が長く続くときは、心理的な要因も視野に入れて専門家に相談することが大切です。

早い段階で気づき、適切な治療や支援につなげることで、子どもの生活の質は大きく改善します。
親や教師、周囲の大人が、子どもの小さな変化に気づいてあげることが第一歩です。

3.親ができること

子どもに強迫性障害の兆候が見られた場合、親として以下のような対応が大切です。

  1. 理解と共感:子どもの不安や恐怖を否定せず、まずはその気持ちに寄り添いましょう。子どもは自分の感情をうまく言葉にできないことも多いため、親が優しく接することが信頼関係の第一歩になります。
  2. 専門家への相談:強迫性障害は、できるだけ早く専門的な診断と治療につなげることが重要です。精神科医や臨床心理士などの専門家に相談し、適切な支援を受けることが最も効果的です。
  3. 家庭でのサポート:治療方針に沿って家庭内での対応を統一することが大切です。子どもが安心して過ごせる環境を整え、家族で協力しながら取り組む姿勢が支えになります。
  4. 「巻き込まれ」に注意する :親が子どもの強迫行為に付き合いすぎると、かえって症状が悪化することがあります。子どもが自分の力で不安に向き合えるよう、親自身が冷静に距離を保つことも必要です 。
  5. ストレス管理:ストレスが高まると、症状が強くなる傾向があります。一緒にリラックスできる時間を作ったり、子どもが安心できる日常を意識して整えることで、症状の軽減が期待できます。

4.治療法

強迫性障害の治療には、次のような方法が効果的とされています。

  • 認知行動療法(CBT):なかでも「曝露反応妨害法(ERP)」という手法が有効です。これは、不安や強迫的な思考を引き起こす状況に少しずつ慣れていき、その際に強迫行為をあえて行わないように支援する方法です。こうした取り組みによって、思考や行動のパターンを徐々に変えていくことができます。
  • 薬物療法:必要に応じて、抗うつ薬やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などが用いられることもあります。薬物療法は、症状を和らげる補助的な役割を担うことが多く、通常は認知行動療法と併せて行われます。
  • 併存症への対応:ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの発達特性を併せ持つ場合は、それらに対応した包括的な治療が必要です。併存する症状にアプローチすることが、強迫性障害の改善にもつながります。

治療は一人ひとりの状態に合わせて進める必要があります。まずは専門医としっかり相談し、最適な方法を見つけていくことが大切です。

5.家族の役割

家族は、子どもの強迫性障害の治療と回復において、非常に重要な役割を担っています。特に、家族の理解と適切な支援は、子どもの回復を大きく後押しします。

家族療法を通じて、家族自身が強迫性障害に対する正しい知識を身につけ、症状を悪化させない関わり方や、日常での工夫を学ぶことが強く推奨されます。

子どもの強迫性障害は、早期に気づいて対応することで、着実な改善が期待できます。親としては、子どもの行動や心の変化に丁寧に目を向けながら、必要なサポートを継続していく姿勢が大切です。

なお、「子どもの強迫性障害」と「親の巻き込まれ」について理解を深めるために、以下の動画も参考になります。

6.まとめ:子どもの強迫性障害は「親の理解と対応」で改善できる

子どもの強迫性障害は、早期に気づき、適切な対応をとることで改善が期待できます。「なぜこんな行動を繰り返すのか」と戸惑うこともあるかもしれませんが、子ども自身も「やめたいのにやめられない」という苦しさを抱えています。

まずは、子どもの不安に共感し、否定せずに受け入れることが大切です。無理に「それをしなくても大丈夫だよ」とやめさせるのではなく、安心して話せる環境を整えることが重要です。

強迫性障害は、「脳の誤った指令」が原因であることが多いため、親の理解と寄り添いが、子どもに「自分は大丈夫」「安心できる」という感覚を育んでいきます。

専門的な治療(曝露反応妨害法(ERP)や薬物療法)と親の支えがあれば、強迫性障害は改善できます。「一緒に乗り越えよう」という姿勢が、子どもにとって最大の支えとなります。「完璧じゃなくていい」「できなくても大丈夫」その一言が、子どもの心を軽くするでしょう。


子どもが「ひとりじゃない」と感じることが、強迫性障害の克服につながります。
親として、そっと寄り添いながら「安心できる場所」をつくってあげましょう。

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