強迫性障害とビタミンD不足の関係

強迫性障害患者におけるビタミンDレベルの減少とその影響 強迫性障害の基礎

強迫性障害(OCD: Obsessive-Compulsive Disorder)は、反復的な強迫観念と、それを中和するための強迫行動が特徴の精神疾患です。世界中で1~3%の人々が影響を受けており、日本でも多くの人々が悩んでいます。近年、強迫性障害の症状とビタミンDの関係について注目が集まっています。ビタミンDは骨の健康にとって欠かせない栄養素として知られていますが、神経系や脳機能にも重要な役割を果たしていることが、さまざまな研究で示されています。

本記事では、強迫性障害におけるビタミンD不足とその影響、さらにビタミンD補充が治療に与える効果について、最新の研究結果をもとに解説します。


1. ビタミンDの基本的な役割と重要性

ビタミンDとは? 役割と重要性

① ビタミンDの基本的な役割

ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、以下のような役割を果たします:

  • 骨の健康維持: カルシウムの吸収を助け、骨代謝を調整することで、骨の健康を支えます。
  • 免疫機能の調整: ビタミンDは免疫系に作用し、炎症反応を抑制する役割があります。これにより、感染症に対する防御を強化します。
  • 神経伝達物質の合成と調整: ビタミンDは、セロトニンやドーパミンなど、気分や不安に関与する神経伝達物質の合成を調整します。また、これらの神経伝達物質は強迫性障害の症状とも密接に関連しています。

② ビタミンDの生成と摂取

  • 日光浴: ビタミンDは主に皮膚で生成され、紫外線B波(UVB)を浴びることで、7-デヒドロコレステロールがビタミンD3に変換されます。
  • 食品: ビタミンDは青魚や卵黄に豊富に含まれています。また、キノコ類やビタミンD強化食品にも含まれています。

③ ビタミンDと脳機能

ビタミンDは脳内の炎症を抑える作用があり、神経細胞の成長や修復にも関与しています。また、ビタミンDがセロトニンの合成を調整し、気分や不安に影響を与えることが研究により示されています。これが、強迫性障害の症状にも関連していると考えられています。


2. 強迫性障害患者におけるビタミンDレベルの減少に関する研究

研究1:強迫性障害患者のビタミンDレベルと症状の重症度

ある研究では、強迫性障害(OCD)患者50名を対象に血中ビタミンDレベルを測定し、結果としてほぼ全員が基準値(30 ng/mL)を下回っていたことが確認されました。この研究は、強迫性障害患者におけるビタミンD不足が一般的である可能性を示唆しています。

さらに、ビタミンDレベルが低い患者ほど、強迫性障害の症状が重症化していることが観察されました。具体的には、Y-BOCS(Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale)スコアが高いほど、ビタミンDレベルが低いという負の相関が見られ、ビタミンD不足が症状の悪化に寄与している可能性が示唆されています。

この研究は以下のリンクから確認できます:

PubMed: Decreased vitamin D levels in obsessive-compulsive disorder patients


研究2:ビタミンDと神経伝達物質

ビタミンDはセロトニンやドーパミンなど、強迫性障害に関連する神経伝達物質の合成に重要な役割を果たしていることが知られています。ビタミンD不足がセロトニンの合成を低下させることが研究で確認されており、このことが強迫観念や不安症状の悪化を引き起こす可能性があります。


研究3:ビタミンD補給による強迫性障害症状の改善効果

2022年に報告された症例研究では、ビタミンDサプリメント(1日2000IU)を8週間にわたり強迫性障害患者に投与した結果、Y-BOCSスコアが有意に改善したと報告されています。しかし、ビタミンDの補充だけでは十分な効果が得られない可能性があり、認知行動療法(CBT)や薬物療法との併用が推奨されています。

出典:The Possible Role of Vitamin D and Autoimmunity in the Etiology of Obsessive-Compulsive Disorder. 2022.


3. ビタミンD不足の原因

① 日光不足

現代社会では、室内で過ごす時間が長く、日光を浴びる機会が減少しています。また、紫外線による皮膚ダメージや皮膚がんのリスクを避けるために日焼けを避ける習慣が普及しています。これにより、ビタミンDの生成が不足しがちです。

② 食生活の偏り

ビタミンDを多く含む食品(青魚、卵黄、キノコ類など)の摂取が少ない食生活や、ビーガンや極端な糖質制限を行っている場合、ビタミンDが不足することがあります。

③ 腸内吸収の低下

消化器系疾患(例:セリアック病、クローン病、膵外分泌不全など)によって脂肪の吸収が障害されると、ビタミンDの吸収が妨げられることがあります。


4. ビタミンD不足への対処法

日光浴を取り入れる

日光浴はビタミンDを生成するために重要です。正午前後に15〜30分程度、日光を浴びることが推奨されます。ただし、皮膚が敏感な人は日陰で行うか、直射日光を避けるようにします。

ビタミンDを含む食品を摂取

ビタミンDを豊富に含む食品を積極的に摂取しましょう。青魚(サーモン、サバ、イワシ)や卵黄、キノコ類(干し椎茸など)に含まれるビタミンDが効果的です。

ビタミンサプリメントの活用

医師の指導のもとで、ビタミンDサプリメントを摂取することが有効です。一般的には1日2000〜4000IU(耐容上限量)を目安に摂取します。過剰摂取は高カルシウム血症や腎障害のリスクを伴うため、医師の監督のもとで適切な量を守りましょう。

ビタミンDの継続的な高用量摂取は高カルシウム血症腎機能障害のリスクがあります。サプリメントを摂取する際は、必ず医師の指導のもとで適切な量を守ることが重要です。


5. まとめ

強迫性障害患者において、ビタミンD不足が症状の重症度と相関していることが示唆されています。ビタミンDは神経伝達物質(特にセロトニンやドーパミン)の合成に影響を与え、不足すると強迫性障害の症状が悪化する可能性があります。

ビタミンD不足に対する対策として、日光浴、ビタミンDを多く含む食品の摂取、そしてビタミンサプリメントの使用が有効です。ビタミンD補給は強迫性障害の症状を軽減する可能性がありますが、単独での効果は限定的であり、認知行動療法(CBT)や薬物療法との併用が推奨されます。

ビタミンD不足が疑われる場合は、血液検査で確認し、必要に応じて専門医に相談することが推奨されます 。

よたきち

✔関西の某国立大学医学部で長年、研究業務に携わる
✔強迫性障害と向き合う当事者として、実体験から得た知識や対処法を発信
✔一度しかない貴重な人生の時間を、強迫性障害に縛られ奪われてほしくない――そんな思いでこのブログを運営。

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